デンソーとアイシンはトヨタグループの自動車部品メーカーである。デンソーは自動車の電装部品を中心に、幅広い自動車部品を展開する世界2位のメガサプライヤ。一方アイシンは駆動系を中心に展開し、ATでは世界首位である。
ここでは、トヨタとデンソー、アイシンの関係と違いを見ていく(2022年3月時点)。
トヨタとデンソー、アイシンの資本関係
トヨタとデンソー、アイシンの資本関係を下の図に示す(数字は議決権の所有割合)。
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「子会社」とは「親会社」が経営を支配している会社である。「関連会社」とは「その他の関係会社」が重要な影響を与えることができる子会社以外の会社である(詳細は文末)。
デンソーとトヨタは、デンソーが関連会社、トヨタがその他の関係会社という関係である。同様に、アイシンとトヨタは、アイシンが関連会社、トヨタがその他の関係会社という関係である。
この3社に親会社や子会社といった関係はない。デンソーとアイシンは関連会社であるが、一般にはトヨタグループの一社であり、トヨタ系自動車部品メーカーの一社であると認識される。
【 子会社と関連会社 一覧 】
トヨタ自動車 デンソー アイシン
デンソーとアイシンのトヨタとの関係
デンソーとアイシンの出自
デンソーの出自は、1949年に旧トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)から分離独立した日本電装である。1951年に上場を果たした。1996年にデンソーと商号を変更し、現在に至る。
アイシンの出自は、1943年に旧トヨタ自動車工業と旧川崎航空機(現川崎重工業)の共同出資により設立された東海飛行機である。1945年、東海飛行機は東新航空機を設立した。終戦後、両社は愛知工業、新川工業となる。
1965年、愛知工業が新川工業を吸収合併し社名をアイシン精機と変更した。2021年アイシン精機は子会社のアイシンAWを吸収合併、社名をアイシンと変更し現在に至る。
デンソーとアイシンのトヨタへの依存
デンソーとアイシンは世界的な自動車部品メーカーとなった現在でも、それぞれ売上の約50%、約60%をトヨタグループに依存している。
※詳細記事:デンソーとアイシンのトヨタへの依存について
トヨタがデンソーとアイシンの経営へ与える影響
デンソーの取締役会には少なくとも1名のトヨタ出身者がいる。またアイシンの取締役会には少なくとも3名のトヨタ出身者がいる。
トヨタは20%を超えるデンソーとアイシンの議決権を所有している両社の筆頭株主である。上述のように、トヨタ自動車は関連会社であるデンソーとアイシンの経営に重要な影響を与えることが出来る。
※詳細記事:デンソーとアイシンにおけるトヨタ出身役員について
以上のようにデンソーとアイシン、トヨタ自動車には深い関係がある。特にトヨタグループへの売上の依存は大きく、”トヨタ系” の域を出られない所以である。
デンソーはトヨタを超えるか
デンソーやアイシンはメガサプライヤと言われ、その売上高はマツダやSUBARU、三菱自動車などの中堅自動車メーカーよりも大きい。ただ、世界2位のサプライヤであるデンソーをもってしても、依然としてトヨタの背中は遠い。
次のグラフではトヨタとデンソー、アイシンの売上高と、参考としてホンダの売上高を加えて比較している。FY2021は2021年度を表す。
売上 [ 億円 ] | FY2019 | FY2020 | FY2021 |
トヨタ | 299,300 | 272,146 | 313,795 |
ホンダ | 149,310 | 131,705 | 145,527 |
デンソー | 51,535 | 49,367 | 55,155 |
アイシン | 37,846 | 35,258 | 39,174 |
トヨタは売上高で30兆円の規模を誇る。一方、デンソーやアイシンはそれぞれ5兆円、4兆円の規模であり、トヨタとは5~8倍程度の開きがある。またホンダとも3倍程度の開きがある。
次に4社の営業利益を比較している。
営業利益 [ 億円 ] | FY2019 | FY2020 | FY2021 |
トヨタ | 24,429 | 21,977 | 29,957 |
ホンダ | 6,336 | 6,602 | 8,712 |
デンソー | 611 | 1,551 | 3,412 |
アイシン | 561 | 1,453 | 1,820 |
トヨタの営業利益は3兆円の規模に対して、デンソーとアイシンはそれぞれ3,000億円、2,000億円の規模である。営業利益での比較では、さらに開きが大きくなっている。なお、トヨタの売上高や営業利益にデンソーやアイシンの売上高や営業利益は含まれていない。
次に2022年のある日の時価総額を比較している。
デンソー:6兆8,456億円
ホンダ:6兆1,570億円
アイシン:1兆2,700億円
特筆すべきは、デンソーがホンダの時価総額を超えていることである。売上高と営業利益ともに大きく上回るホンダに対して、デンソーの将来性への期待値が勝っている結果と言えるかも知れない。
ただ、もう一方のサプライヤであるアイシンの時価総額(つまり株価)は振るわない。
デンソーとアイシンの事業内容
デンソーとアイシンの事業内容について見ていく。トヨタは自動車、金融、その他の3つの事業を定義している。
「自動車」事業は、完成車の製造・販売に加え、部品の製造・販売なども含まれる。「金融」事業には、トヨタファイナンスや車両のリース事業が含まれる。「その他」事業では、情報通信事業などを手掛けている。
デンソーの6つの事業
次に示すのはデンソーが展開する6つの事業である。デンソーは5つの自動車部品に関連した事業と、その他の事業を1つ抱える。
1. サーマルシステム
HVAC(暖房・換気・空調の意味)、コンプレッサ、シート空調、コンデンサ、ラジエータなど
2. パワトレインシステム
コモンレールや尿素SCRインジェクタなどのディーゼルエンジン部品、インジェクタや直噴ポンプなどのガソリンエンジン部品、点火プラグ、排気センサ、可変カムタイミング、フィルタなど
3. モビリティエレクトロニクス
エンジンECU、トランスミッション制御ECU、ヘッドアップディスプレイ、ETC車載器、画像センサ、ミリ波レーダ、自動運転ECU、ブザーなど
4. エレクトリフィケーションシステム
インバータ、DC-DCコンバータ、電池ECU、リチウムイオン電池パック、電動パワーステアリングECU、ワイパシステム、ウォッシャシステムなど
5. 先進デバイス
CASE領域製品、エアフロメータなどのセンサ類、圧力センサ、光センサ、温度センサといった半導体センサなど
6. 非車載事業
QRコードスキャナ、ICカードリーダ、RFIDリーダ、ロボットや園芸関連製品などの自動車部品以外
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アイシンの5つの事業
次に示すのはアイシンが展開する2つの事業である。アイシンは4つの自動車部品に関連した事業と、その他の事業を1つ抱える。
1. パワートレイン関連
AT、MT、CVT(無段変速機)、ハイブリッドトランスミッション、eAxle(モータとインバータ、トランスアクスルを一体化したEV用パワーユニット)など
2. 走行安全関連
ブレーキマスターシリンダー、ディスクブレーキ、ABS(アンチロックブレーキシステム)、電動パーキングブレーキ、自動駐車システムなど
3. 車体関連
パワースライドドアシステム、サンルーフ、パワーシート、ドアハンドル、ドアロック、体重検知センサーなど
4. CSS関連 他
カーナビ、乗り合い送迎サービス、補修・メンテナンス用商品など(CSSはコネクティッド&シェアリングソリューションの略)
5. エナジーソリューション関連 他
ガスヒートポンプエアコン、コージェネレーションシステム、シャワートイレ、住宅リフォーム、建設土木、石油販売など
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トヨタとデンソー、アイシンの給与水準 比較
3社の給与水準は次の通り。
【 トヨタ自動車 】
従業員数:70,710
平均年齢:40.4
平均年間給与:857万円
【 デンソー 】
従業員数:45,152
平均年齢:44.2
平均年間給与:787万円
【 アイシン 】
従業員数:36,489
平均年齢:38.4
平均年間給与:672万円
親会社と子会社、関連会社とは
「親会社」「子会社」もしくは「その他の関係会社」「関連会社」の関係を下の図に示す(数字は議決権の所有割合)。これらを全てまとめて「関係会社」と呼ぶ。
基本的に、図に示す議決権の所有割合によって関係が決まることが多い。ただし、その会社の重要性や具体的な関係などを考慮する場合もあり、常に議決権の所有割合によって決まる訳ではない。
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