2021年元旦、大手自動車部品メーカーである日立Astemo(読み方:日立アステモ)が発足した。日立アステモは日立製作所傘下の日立オートモティブシステムズ(日立AMS)と本田技研工業(ホンダ)傘下のショーワ、ケーヒン、日信工業の合併により成立した企業である。
日立AMS + ショーワ + ケーヒン + 日信工業 → 日立アステモ
さらに2023年3月、日立アステモを巡る資本構成の変更が発表された。ここでは、これまでの日立アステモをめぐる資本関係の変遷と、日立アステモの売却や新規上場について見ていく(2024年3月時点)。
日立アステモをめぐる資本関係の変遷
ここでは日立アステモをめぐる、資本関係を見ていく。下の図は2021年元旦を境として日立アステモ発足前と発足後の資本関係を示している(数字は議決権の所有割合)。
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「子会社」とは「親会社」が経営を支配している会社である。「関連会社」とは「その他の関係会社」が重要な影響を与えることができる子会社以外の会社である(詳細は文末)。
2023年3月、以下のように日立アステモを巡る資本構成の変更が発表された。日立製作所は日立アステモ株式の一部をホンダに譲渡し、両社は40%ずつ等しく所有する。持分が下がることで、日立アステモは日立製作所の子会社ではなくなり、関連会社となる。
日立製作所とホンダが所有する株式の合計は100%から80%となる。残り20%は、産業革新投資機構の子会社であるJICキャピタルが運用するファンドに売却する。
日立製作所66.6% + ホンダ33.4%
→ 日立製作所40% + ホンダ40% + JICキャピタル20%
【合併以前】日立AMS、ショーワ、ケーヒン、日信工業
日立AMSは日立製作所の完全子会社(議決権の100%を親会社が所有)であった。日立AMSは2009年に日立製作所のオートモティブシステムグループが分離独立し、設立された子会社である。日立AMSと呼称される企業が存在したのは約10年間であった。
ショーワ、ケーヒン、日信工業は、ホンダの関連会社であった。このことからホンダ系部品メーカーと呼ばれる。この3社はいずれも上場企業であったが、合併のため上場を廃止している。
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系列の部品メーカー
ホンダのように、完成車メーカーが上場している自動車部品メーカーを関連会社として傘下に持つことは一般に行われる。例えば、デンソーやアイシン、ジェイテクト、トヨタ紡織などはトヨタ自動車の関連会社であり、トヨタ系部品メーカーと呼ばれる。
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【合併以降】日立製作所、ホンダとの関係
4社が合併し日立アステモが発足後、日立アステモが子会社、日立製作所が親会社という関係であった。2023年の資本構成の変更により、日立アステモは日立製作所の関連会社となる。
ホンダとの関係は4社の合併以降は変わっておらず、日立アステモが関連会社、ホンダがその他の関係会社となっている。
日立製作所のオートモティブシステムセグメントの廃止
日立製作所は以下の4つのセグメントで事業を展開していた。日立アステモが子会社から関連会社となったため、セグメント「オートモティブシステム」は2024年4月をもって廃止された。
・グリーンエナジー&モビリティ
・コネクティブインダストリーズ
・オートモティブシステム(廃止)
なお、セグメント「グリーンエナジー&モビリティ」のモビリティとは、自動車ではなく、鉄道を表す。
上場(IPO)、売却の可能性
日立アステモはIPO(新規上場)を視野に入れており、日立製作所とホンダ、JICキャピタルが成長支援を行っていくことが示されている。日立アステモは、”持続的な成長の実現とともに、グローバルメガサプライヤーとしての地位を確固たるものにすることを” 目指すとしている。
親会社と子会社、関連会社とは
「親会社」「子会社」もしくは「その他の関係会社」「関連会社」の関係を下の図に示す(数字は議決権の所有割合)。これらを全てまとめて「関係会社」と呼ぶ。
基本的に、図に示す議決権の所有割合によって関係が決まることが多い。ただし、その会社の重要性や具体的な関係などを考慮する場合もあり、常に議決権の所有割合によって決まる訳ではない。
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