ニッチな業界でグローバルに活躍する企業をグローバルニッチトップと呼び、これは日本の経済産業省の用語である。これまでに2度、経済産業省はグローバルニッチトップ企業を選出し、表彰している。
グローバルニッチトップの定義
ここでいうグローバルニッチトップの定義は次の通り。
100~1000億円程度の市場で、20%以上の世界シェア。
【 中堅企業、中小企業の場合 】
10%以上の世界シェア。
グローバルニッチトップ企業は世界シェアがトップである必要はなく、市場で一定の存在感を示す企業をいう。またニッチというと中小企業が想起される場面も多いが、ここでは大企業によるニッチ市場でのビジネスも含まれている。
中小企業とは
ここでいう中小企業とは、中小企業庁による定義に従うと考えられる。中小企業の定義は業界によって異なるが、製造業を例にとると、次のように定義されている。一般に、中小企業でない企業を大企業と呼ぶ。
詳細記事:大企業と中小企業の定義、違いとは
中堅企業とは
上記の定義でいう中堅企業とは、大企業のうち売上高が1,000億円以下の企業である。グローバルニッチトップ企業を選出するにあたって、経産省は中堅企業という言葉を定義し、大企業とは別の企業群として捉えている。
グローバルニッチトップの概念
下の図はグローバルニッチトップの概念図。市場規模が小さく、シェアが高い領域を示す。
世界シェアの規模感を示すために、ある年の薄型テレビの業界を例に挙げる。
1位、サムスン(28%)
2位、LG(13%)
3位、ソニー(8%)
4位、ハイセンス(6%)
薄型テレビで言えばトップ企業は、サムスン、もしくはサムスンとLGとなる。もちろん薄型テレビの市場はニッチとは言えないほどに大きい。
経産省が算出したグローバルニッチトップ企業
経産省によって選出されたグローバルニッチトップ企業は下記。2014年と2020年にそれぞれ約100社(2020年は113社)が選出されている。JFEスチールやナブテスコなどの大企業から従業員が数10名の中小企業まで幅広い。
グローバルニッチトップ企業【2020年】
ニッチトップ企業100選の一覧(2020)
ニッチトップ企業100選の詳細(2020)
産業別のグローバルニッチトップ
グローバルニッチトップ企業100選(113社)は、次の産業別に選出されている。機械・加工部門が最も多く、全体の半数を占める。
2位:素材・化学部門 24社
3位:電気・電⼦部⾨ 20社
4位:消費財・その他部⾨ 8社
機械・加工部門の事例
機械・加工部門から選出された企業61社のうち、次の企業を取り上げる。
事例:川崎重工業
川崎重工は大手重工の一角であり、日本を代表する総合重機の1社である。川崎重工は、航空用ギヤボックス製品を設計・製造できる世界で数少ないメーカーということで選出されている。選出時の社員数:36,332 人。
航空用ギヤボックス製品とは、ヘリコプタ用トランスミッションや航空エンジン用アクセサリギヤボックスなどを指す。これらの製品は世界でも数社の寡占状態にあり、川崎重工は世界に対抗できる唯一の日系メーカーとのこと。
事例:太平洋工業
太平洋工業は岐阜県に本社を置く自動車部品などを生産するメーカーである。太平洋工業は、自動車用タイヤバルブで選出されている。選出時の社員数:4,800人
タイヤバルブはタイヤに空気を入れる注入口のこと。このタイヤバルブで、太平洋工業は国内シェア100%、世界シェアで50%を超えるトップシェアを獲得している。
素材・化学部門の事例
素材・化学部門から選出された24社のうち、次の企業を取り上げる。
事例:旭化成
旭化成は大手化学の一角であり、日本を代表する総合化学メーカーである。旭化成は、再生セルロース繊維キュブラの糸・綿と不織布で選出されている。選出時の社員数:39,283 人
旭化成がキュブラを初めて手掛けたのは1931年で、一時期は数社が生産を行っていた。しかし2009年より、旭化成がキュブラを生産する世界で唯一のメーカーとなっている。
※関連記事:旭化成って何の会社? 事業内容と企業研究
電気・電⼦部⾨の事例
電気・電⼦部⾨から選出された20社のうち、次の企業を取り上げる。
事例:ニューフレアテクノロジー
ニューフレアテクノロジーは東芝グループの半導体製造装置専業メーカーである。ニューフレアテクノロジーは、フォトマスク量産用電子ビーム描画装置で選出されている。選出時の社員数:630人
ニューフレアテクノロジーは1999年より、電子ビーム描画装置の開発・販売を行ってきた(当時は東芝機械の半導体事業部)。フォトマスク量産用電子ビーム描画装置で、ニューフレアテクノロジーは世界シェア90%以上を獲得している。