日本ガイシと日本特殊陶業、TOTO、ノリタケカンパニーリミテド(ノリタケ)はいずれも旧森村財閥を出自とする企業である。現在は他の旧財閥と同じく緩い企業グループである「森村グループ」を形成している。
4社の資本関係
森村グループを代表する4社は、現在では薄い関係である。2009年に設立した固体酸化物燃料電池(SOFC)の合弁会社「森村SOFCテクノロジー」を中心とすると、4社の関係は下の図のようになる(数字は議決権の所有割合、2022年3月時点)。
森村SOFCテクノロジーは日本特殊陶業の子会社であり、TOTOの関連会社である。日本ガイシやノリタケも出資しているが、その割合は少ない。また、TOTOは日本特殊陶業やノリタケの大株主として名を連ねている。しかし出資の割合はごく少ない割合である。
【 子会社 関連会社 一覧 】
日本ガイシ 日本特殊陶業 TOTO
歴史的な経緯から見る4社の関係
以上のように現在ではほとんど資本関係のない4社であるが、いずれも旧森村財閥の直系である。森村組から日本陶器や森村銀行が派生した。森村銀行は戦前1897年、三菱銀行(現 三菱UFJ銀行)と合併し消滅している。森村組は戦後1946年、森村商事と社名を変更し現在に至る。
上の図にあるように、森村組から派生した日本陶器からは東洋陶器と日本碍子(読み:がいし)が派生している。さらに日本特殊陶業は日本碍子から派生した。
4社はすべて陶器(セラミック)製品を主力とするメーカーである。似た業態であるにも関わらず、上記のように分離独立してきたのは、森村の一業一社という思想によるものである。
日本陶器 → ノリタケ
日本陶器は1981年、創業の地である愛知県愛知郡鷹場村大字則武(読み:のりたけ、現ノリタケの森)に因んでノリタケカンパニーリミテドと社名を変更し現在に至る。ノリタケは次の4事業を展開する。
・工業機材事業
・セラミック・マテリアル事業
・エンジニアリング事業
・食器事業
ノリタケは高級陶磁器が有名であるが、高級陶磁器を手掛ける食器事業の売上高は60億円規模となっている。ノリタケの売上高1,000億円規模と比較すると小さい事業であり、また10億円規模の赤字を計上している(2021年3月期、2022年3月期)。
東洋陶器 → TOTO
東洋陶器は、1970年に東陶機器という社名を経て、2007年にブランド名のTOTOへ社名を変更した。TOTOは東洋陶器の略称である東陶(とうとう)が由来である。TOTOは次の2事業を展開する。
・グローバル住設事業
・新領域事業
グローバル住設事業はTOTOが主力とするトイレ、風呂、キッチンなどを手掛ける。TOTOの売上高6,000億円規模に対して、新領域事業の売上高は300億円程度で、TOTOの売上高のほとんどがグローバル住設事業の売上高となっている。
日本碍子 → 日本ガイシ
日本碍子は、現在でも正式な社名を日本碍子と書くが、1986年より通称として日本ガイシを用いている。名古屋市の施設の命名権を購入し、日本ガイシスポーツプラザや日本ガイシホールなどの名称を付けることで、地域社会へ社名が浸透している。
日本ガイシは次の4事業を展開する。
・エネルギーインフラ事業
・セラミック事業
・エレクトロニクス事業
・プロセステクノロジー事業
日本ガイシの最大事業はセラミック事業となっており、自動車排ガス浄化用部品などを手掛ける。
日本碍子 → 日本特殊陶業
日本特殊陶業は戦前1936年に日本碍子より分離した。現在でもNGKというブランド名を用いており、さらに英文社名をNGK SPARK PLUG CO., LTD.という。NGKは日本ガイシの略称であるが、一方で日本特殊陶業の略称であるNTKも用いる。
日本特殊陶業は2023年4月より、英文社名をNGK SPARK PLUG CO., LTD. からNiterra Co., Ltd.(読み:ニテラ)へ変更することを発表している。Niterraはラテン語の「輝く:niteo」と「地球:terra」を組み合わせた造語で、特に深い意味はない。
日本特殊陶業は次の3事業を展開する。
・自動車関連
・セラミック
・新規事業
日本特殊陶業は自動車用プラグや排気系センサーなどを手掛ける自動車関連事業を主力とする。自動車関連事業の売上高は日本特殊陶業の売上高の8割近くを占める。