日本特殊陶業の将来性と新規事業【企業研究】

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日本特殊陶業の新規事業に着目し将来性を見ていく(2022年3月時点)。

日本特殊陶業の事業とリスク

日本特殊陶業は次の4つのセグメントで事業を展開する。最大事業のセグメント「自動車関連」は売上高の約8割を占める

自動車関連
・セラミック
新規事業
・その他

日本特殊陶業はセグメント「自動車関連」において、次のようなリスクを抱えている。

1)補修用スパークプラグの販売において、先進国では長寿命プラグを求める傾向にあり、販売量の拡大が継続しない可能性
2)自動車メーカーにおいて電気自動車への移行が進み、内燃機関部品のニーズがより低下する可能性

そこで日本特殊陶業は次のように中長期的な会社の経営戦略を掲げている。

【 基本方針 】
「既存事業」と「新規事業」が独立しながら、両輪で走る
【 重点課題 】
・成長事業及び新規事業への投資・人財ポートフォリオ転換の促進
・ROIC経営による稼ぐ力のさらなる強化

日本特殊陶業の新規事業と将来性

基本方針と重点課題で掲げられている「新規事業」と、最大事業である「自動車関連」に着目する。「自動車関連」には約1万2,000名の従業員が従事するのに対し、「新規事業」に従事する従業員は約700名である。

「自動車関連」から「新規事業」へ

重点課題で掲げる”ポートフォリオ転換”とは、セグメント「自動車関連」がキャッシュを創出し、「新規事業」などへ経営資源を再配分することをいう。「自動車関連」は次に挙げる手段で利益及びフリーキャッシュフローの最大化に取り組む。

【 自動車関連のキャッシュ創出の最大化 】
・高付加価値製品におけるシェアの向上
・生産性の向上による投資の抑制
・在庫圧縮による資本効率の向上

自動車関連で創出されたキャッシュは「新規事業」へ配分される。「新規事業」は、(1)新たな事業の柱となる新規事業の実現、(2)事業創出サイクルの短縮化、を目指す。

新規事業「SOFC」:規模の拡大へ

日本特殊陶業の新規事業を代表する製品として燃料電池(SOFC)が挙げられる。

SOFCは固体酸化物形燃料電池の略。日本特殊陶業は機能性セラミックスの材料技術とプロセス技術を活かすことができる。SOFCはすでに量産化済みであり、今後は競争力の獲得と事業規模の拡大に取り組む。

SOFCは森村グループ各社からの出資を受ける森村SOFCテクノロジーや、三菱重工から出資を受けるCECYLLSで、製造・販売を行っている。森村SOFCテクノロジーとCECYLLSはいずれも日本特殊陶業の子会社である。

また、SOFCを応用した固体酸化物形電解セル(SOEC)の事業化に向けて、開発を行っている。

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新規事業「その他」:3つの注力領域

新規事業の創出については、次の3分野を注力領域とする。ベンチャー企業との連携やM&Aの活用により新市場の獲得を目指す。

・Smart Health
・Decentralized Utility
・Smart Mobility

Smart Health
在宅医療モニタリング、創傷治癒、リハビリテーション

Decentralized Utility
陸上養殖、空気浄化システム、エコエネルギー、グリーンプラントマネジメント

◆ Smart Mobility
サービスプラットフォーム、xEVシステム、エネルギー変換、充電ソリューション

ポートフォリオ転換

「新規事業」などへ経営資源を再配分を意味する”ポートフォリオ転換”は次の計算式により、評価される。

事業ポートフォリオ転換達成率(%)=(成長事業・新規事業売上収益)÷(連結売上収益)×100

事業ポートフォリオ転換達成率は各事業年度において、次のように目標値が設定されている。

2022年3月期2023年3月期2024年3月期2025年3月期
19%20%23%27%

事業ポートフォリオ転換達成率は、取締役や上席執行役員の報酬(業績連動型)の算定に用いられる。2022年3月期の「新規事業」の業績は次の通り。

「新規事業」の業績
・売上高:46億円
・営業利益:△136億円

日本特殊陶業の売上高は約4,900億円であり、「新規事業」の割合は1%に満たない。「自動車関連」の売上高3,877億円の1.2%である。一方で、「新規事業」は売上高を超える136億円の損失(赤字)を計上している。

「自動車関連」と「新規事業」は事業規模では大きな差があるが、研究開発費については、ほぼ同額で82億円がそれぞれに割り当てられている。

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