空飛ぶクルマは近年、急速に開発が進み話題となっている。一方、ヘリコプターはすでに実用化され長い年月が経っている。ここでは空飛ぶクルマとヘリコプターの違いを見ていく。
ただし、明確に定義された言葉ではなく、一般的にどう呼ばれることが多いかである。
eVTOL(イーブイトール)
eVTOLという言葉がある。eVTOLは、electric vertical takeoff and landing の略で、電動垂直離着陸機と訳す。飛行機と違い滑走路が不要で、文字通り垂直に離陸と着陸が出来る電動の航空機である。
一般的に、人が乗らないeVTOLをドローンと呼び、人が乗るeVTOLを空飛ぶクルマと呼ぶことが多い。空飛ぶクルマは人が乗るドローンという意味で、有人ドローンとも呼ばれる。
ヘリコプターは多くがエンジンを搭載する。電動ではない垂直離着陸が可能な航空機をVTOLと呼ぶが、ヘリコプターをVTOLに含めるかは文脈による。一般的にはオスプレイV-22のような、固定翼をもった垂直離着陸が可能な航空機をVTOLと呼ぶことが多い。
そのため、ヘリコプターを電動化しても電動ヘリコプターと呼ばれ、eVTOLと呼ばれることは少ない。基本的に、電動ヘリコプターと空飛ぶクルマは区別される。これは電動のラジコンヘリとドローンが区別さえれていることと同様である。
ローターの数
多くのヘリコプターは2つのローターを持つ。ローターが1つだけだと、反作用によってヘリコプターの本体はローターと逆の方向に回転してしまう。
下の図の右側の例では、本体後方のローターで本体の回転を打ち消すことで、本体が回転するのを防いでいる(ングルローター式)。左側の例では、同じサイズのローターがそれぞれ逆回転することで、本体が回転することを防いでいる(タンデム式)。
一方、空飛ぶクルマやドローンは、ヘリコプターよりも多くのローターを持ち、1つずつが小さい。下の図の例は、4つのローターを持つドローンである。
伊藤忠商事やENEOSなどが出資するSKYDRIVEのSD-03も4つのローターを持つ。トヨタが出資するJoby AviationのeVTOLのローターは6つ。ホンダの関連会社であるテイエステックが出資するteTra aviationのMk-5に至っては32個のローターを持ち、うち4つが故障しても飛行可能という。
運用の難易度
ローターの数の違いは、操縦の難易度と関連する。ヘリコプターの操縦は高度な技術を要する。これはラジコンヘリも同様であり、操縦の難易度は高い。一方、ドローンの操縦は容易で、誰にでも操縦が可能である。これは空飛ぶクルマの特徴でもある。
国土交通省によると、空飛ぶクルマに “明確な定義はない” としつつも「電動」「垂直離着陸」と同時に「自動(操縦)」という言葉も用いて説明している。これは(人間にとって)操縦が容易であることの最たるものである。
ヘリコプターと空飛ぶクルマでは、メンテナンスの難易度の違いもあるとされる。ヘリコプターのメンテナンスは専門技術が必要で、かつ高価である。空飛ぶクルマは、一般的な自動車と同等のメンテナンスの容易さであるとされる。
まとめ
技術の進歩によって電動化や自動操縦を含む操縦の容易さ、メンテナンスの容易さが実用段階にきている。「新種のヘリコプター」や「新種のVTOL」ではなくあえて「空飛ぶクルマ」と呼ぶ理由は、自動車のように操縦や日々のメンテナンスが容易というニュアンスによるものと考えられる。