2021年1月に米国でバイデン政権が誕生してから、今まで欧州が中心であった脱炭素・カーボンニュートラルは一気に世界の潮流となった。ここでは昨今の話題の中心である石炭についてまとめる。
まず石炭とコークスの違いであるが、石炭から作られた個体燃料をコークスと呼ぶ。また一般炭と原料炭は、一般炭は発電用燃料、原料炭は製鉄用の原料と用途が異なる。それぞれの詳細は下記の通り。
一般炭と原料炭の違い
石炭は用途によって大きく2つに分けられる。それが一般炭と原料炭である。
一般炭は発電に用いられる。火力発電に用いられる化石燃料は、液化天然ガス(LNG)、石油、そして石炭(一般炭)である。
日本の石炭火力発電所は、JERA(※JERAとは)の常陸那珂火力発電所や、電源開発の松浦火力発電所などの電力会社の運営の他、日本製鉄の鹿島火力発電所など多岐に渡る。※石炭火力発電所一覧(資源エネルギー庁)
日本において1次エネルギーに占める石炭の割合は1/4程度、すべての化石燃料の割合は8割を超える。
原料炭は製鉄用の原料として用いられる。製鉄メーカーは大きく高炉メーカーと電炉メーカーに分けられ、原料炭は高炉メーカーで用いられる。
高炉で鉄を生産するために用いられる原料は、鉄鉱石、石灰石、そして石炭(原料炭)である。鉄鉱石と石灰石から作った焼結鉱と、石炭(原料炭)から作ったコークスを高炉に投入し、鉄を生産する。※日本製鉄による解説
日本の高炉メーカーは再編の後、日本製鉄、JFE、神戸製鋼の3社に集約された。電炉メーカーは多く存在しており、東京製鐵、共英製鋼、合同製鉄などがある(高炉メーカーの関係会社含む)。※関係会社とは
石炭とコークスの違い
コークスは石炭(原料炭)を蒸し焼きにして作られる。鉱山から掘り出され、船で日本に運び込まれた石炭をそのまま製鉄に用いることはできない。
石炭(原料炭)は大きさを揃えるために粉砕され、水分量の調整など事前処理が施される。その後、コークス炉に入れられ、1000℃を超える温度で蒸し焼きにされることでコークスとなる。
こうして作られたコークスが上述のように高炉に投入され、鉄を生産するための原料となる。また古くはダルマストーブの燃料として、石炭や薪とともにコークスも用いられていた。
一般炭と原料炭の生産と輸出入
世界の石炭のほぼ半分は中国によって生産されている。次いで米国、インドが生産量の多い国として挙げられる。ただし、これらの国は国内での消費が多いため、石炭を輸出することはほとんどない。
中国やインドは世界有数の石炭生産国でありながら、自国の生産量だけではまかなえず、海外からの輸入も多い。中国とインドは日本と並び、一般炭、原料炭ともに世界最大の輸入国でもある。
また、米国やインドと並び、豪州、インドネシア、ロシアも石炭の生産量が多い国として挙げられる。これらの国は、国内消費以上の石炭を生産し、輸出を行っている。
世界での一般炭と原料炭の生産量は、一般炭:原料炭 = 約6:約1の割合である。つまり、一般炭の生産量は原料炭の6倍多くなっている。