ホンダジェットは本田技研工業(ホンダ)が展開する小型ビジネスジェットで、価格は約6億円から。航続距離は2,661kmとなっている(北海道~沖縄の直線距離が2,244km)。ホンダジェットは2021年まで5年連続で小型ジェット機において世界トップのデリバリー数を達成した。
また三菱重工が撤退したMitsubishi Space Jet(旧MRJ)と比較され、事業化した数少ない日本企業の航空機事業としても知られている。ここではホンダの航空機に関わる事業の赤字と、同事業に携わる子会社の債務超過を見ていく(2024年3月時点)。
ホンダジェットの赤字 推移
下に示すのは、ホンダの航空機および航空機エンジンの営業損益の推移である。なお、この数字はホンダのライフクリエーション事業とその他の事業に含まれる。
営業損益 [ 億円 ] |
2017年 3月期 |
2018年 3月期 |
2019年 3月期 |
2020年 3月期 |
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
2023年 3月期 |
2024年 3月期 |
航空機および航空機エンジン | -438 | -418 | -402 | -422 | -323 | -337 | -257 | -329 |
航空機および航空機エンジンは、常に200~400億円規模の営業損失の計上を続けている。航空機は莫大な開発費がかかることで、その発売後も赤字が続くとされる。販売を続けることで、ある時期から黒字化、さらには累積損益の黒字化を目指す。ホンダは黒字化する時期を明確にしていない。
ホンダジェットと債務超過 推移
次にホンダエアロとホンダエアクラフトカンパニーの2社を取り上げる。
ホンダエアロは、航空エンジンの生産を行うホンダの完全子会社であり、米国に拠点を置く。このエンジンはホンダジェットにも搭載される。エンジンの開発はGEアビエーションと本田技術研究所、販売はGEホンダエアロエンジンズが行う。
GEアビエーションは米ゼネラルエレクトリック(GE)傘下の航空エンジンメーカー、本田技術研究所はホンダの完全子会社。GEホンダエアロエンジンズはGEアビエーションとホンダエアロの合弁会社(出資比率50:50)である。
ホンダエアクラフトカンパニーは、ホンダジェットの開発・生産・販売を手掛けるホンダの完全子会社であり、同じく米国に拠点を置く。ホンダエアロとホンダエアクラフトカンパニーは長く債務超過の状態が続く。2社の債務超過額の推移を示す。
債務超過額 [ 億円 ] |
2017年 3月期 |
2018年 3月期 |
2019年 3月期 |
2020年 3月期 |
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
2023年 3月期 |
2024年 3月期 |
ホンダエアロ | 193 | 228 | 286 | 330 | 372 | 437 | 506 | 459 |
ホンダエアクラフトカンパニー
|
600 | 767 | 962 | 1,148 | 1,314 | 1,650 | 1,897 | 2,348 |
ホンダエアロとホンダエアクラフトカンパニーの債務超過額は年々、その額が増えている事が分かる。債務超過とは、負債が資産を上回る状態をいう。ただし、債務超過が企業の破綻と直接的に結びついている訳ではない。
なお、Mitsubishi Space Jetの開発を手掛けていた三菱航空機(三菱重工の子会社)も同様に債務超過の状態にあった。三菱航空機の債務超過額は以下の通りで、同時期のホンダの米国子会社2社の合計よりも大きな額となっている。※三菱航空機は2023年4月にMSJ資産管理に商号を変更した。
2020年3月期:4,646億円
2021年3月期:5,559億円
2022年3月期:5,647億円
2023年3月期:5,764億円
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