オリックスはリースや不動産、保険など非常に幅広い業種で事業を展開している。そのため、「オリックスは〇〇の会社だ」と一言で言うのは難しい。
ここでは沿革や業種、セグメントなど複数の視点から、オリックスの事業内容について見ていく(2022年3月時点)。
オリックスの沿革と多角化
オリックスは1964年、次の3商社+5銀行を株主とし、オリエント・リースとして設立された。オリエント・リースは当時の日本に無かった「リース」という金融手法を日本へ導入し、そのパイオニアとなった。
・日商(現 双日)
・岩井産業(現 双日)
・三和銀行(現 三菱UFJ銀行)
・東洋信託銀行(現 三菱UFJ信託銀行)
・日本勧業銀行(現 みずほ銀行)
・神戸銀行(現 三井住友銀行)
・日本興業銀行(現 みずほ銀行)
現在、これらの商社や銀行はオリックスの大株主ではない。初代社長は日綿実業の社長を務めた福井慶三、2代目社長は三和銀行出身の乾恒雄。
オリエント・リースは1988年、阪急ブレーブス(現 オリックス・バファローズ)を買収しプロ野球チームの経営に進出した。1989年には社名を現在のオリックスへ変更した。オリックスは造語であり、「ORIGINAL」と「X」の組み合わせとされている。
ORIGINAL(独創性)+ X(無限大)= ORIX
オリックスは「リース」の会社として設立された。リースを起点とし隣接する事業へ多角化していったのが、現在のオリックスの姿である。オリックスは今後も新領域を開拓し、事業領域を拡大していくとしている。
上場会社としてのオリックスと業種
オリックスは東証プライム市場とニューヨーク証券取引所に上場する。幅広い業種に展開するオリックスだが、東証では「金融・保険業」の「その他金融業」に分類される。「その他金融業」にはオリックスの他、次の上場会社が名を連ねる。
・東京センチュリー
・芙蓉総合リース
・みずほリース
・イオンフィナンシャルサービス
・クレディセゾン など
オリックスと総合商社の違い
オリックスと総合商社は多角的に事業を展開している点で似ている。前述のようにオリックスは総合商社などによって設立され、金融業をバックグラウンドに持つ企業である。祖業であるリースを起点として現在まで多角化を進めてきた。
一方、総合商社は貿易や流通を担う卸売業をバックグラウンドに持つ。株式市場の分類でも三菱商事や住友商事など総合商社は「商業」の「卸売業」に分類される。オリックスは前述のように「金融・保険業」の「その他金融業」に分類される。
業績と従業員の給与水準
オリックスは売上高に相当する営業収益で2兆円を超える規模を誇る。また営業利益率は10%を超えるレベルで推移する。2022年3月期の業績は次の通り。
営業収益:2兆5,204億円
営業利益:3,021億円
海外売上比率は22.8%であり、売上の80%近くを国内に頼っている。国内向けの売上77.2%に、米州地域の9.5%が続き、残りの10%程度がその他の海外地域である。
従業員の給与水準は次の通り。
平均年齢:43.7歳
平均年間給与:885万円
オリックスの将来性
ここでは成長性分析を通じて、オリックスの将来性を占う。成長性分析では、売上高成長率と純利益増加率、総資産成長率、従業員増加率を用いる。
◆ 過去5年の売上高の推移は次の通り。売上高成長率は-12%であった。
[ 億円 ] | 2018年3月 | 2019年3月 | 2020年3月 | 2021年3月 | 2022年3月 |
売上高 | 28,628 | 24,349 | 22,803 | 22,927 | 25,204 |
◆ 過去5年の純利益の推移は次の通り。純利益増加率は-0.3%であった。
[ 億円 ] | 2018年3月 | 2019年3月 | 2020年3月 | 2021年3月 | 2022年3月 |
純利益 | 3,131 | 3,237 | 3,027 | 1,924 | 3,121 |
◆ 過去5年の総資産の推移は次の通り。総資産成長率は24.9%であった。
[ 億円 ] | 2018年3月 | 2019年3月 | 2020年3月 | 2021年3月 | 2022年3月 |
総資産 | 114,260 | 121,749 | 130,675 | 135,631 | 142,707 |
◆ 過去5年の従業員数の推移は次の通り。従業員増加率は1.1%であった。
[ 人 ] | 2018年3月 | 2019年3月 | 2020年3月 | 2021年3月 | 2022年3月 |
従業員数 | 31,890 | 32,411 | 31,233 | 33,153 | 32,235 |
オリックスは4つの指標のうち2つの指標でプラス成長を示した。
事業セグメント
オリックスはグループとして、次に示す10のセグメントで事業を展開する。オリックスグループは、オリックスの他、1006社の連結子会社と152社の関連会社で構成される。
・不動産
・事業投資・コンセッション
・環境エネルギー
・保険
・銀行・クレジット
・輸送機器
・ORIX USA
・ORIX Europe
・アジア・豪州
オリックスグループの連結従業員3万2,235人のうち約8,000人が「不動産事業」に属し、これが最大規模である。一方、オリックス単体では単体従業員2,968人のうち約半数が「法人営業・メンテナンスリース」に属しており、これが最大規模である。
2022年3月期における各セグメント利益は次の通り。なおセグメント利益の合計は5,512億円となり、オリックスの連結営業利益などとは一致しない。
セグメント利益合計の45.6%を法人営業・メンテナンスリースが稼ぐ。また海外のセグメントも一定の割合を占めており、USA、Europe、アジア・豪州の合計は32.3%を占める。一方、事業投資・コンセッションや輸送機器では小幅ながら赤字となっている。
※関連記事:オリックスの子会社と関連会社 一覧
次の項目からは、オリックスの10のセグメントの事業内容を見ていく。
法人営業・メンテナンスリース
・金融・各種手数料ビジネス
・リースやレンタル(自動車、電子計測器・IT関連機器など)
このセグメントの主要会社としてオリックスの他、オリックスレンタカーを展開するオリックス自動車、電子計測器などのレンタルを展開するオリックス・レンテックなどが挙げられる。
不動産
・不動産開発
・賃貸
・管理
・施設運営
・不動産のアセットマネジメント
このセグメントの主要会社としてオリックスの他、オリックス不動産、オリックスアセットマネジメントなどが挙げられる。
事業投資・コンセッション
・企業投資
・コンセッション
コンセッションとは施設の所有権を国や自治体が所有したまま、施設の運営を民間企業が行う方式のことをいう。
このセグメントの主要会社として挙げられるのは、オリックスのみである。
環境エネルギー
・国内外再生可能エネルギー
・電力小売
・省エネルギーサービス
・ソーラーパネル
・蓄電池販売
・廃棄物処理
このセグメントの主要会社としてオリックスの他、オリックス環境などが挙げられる。
保険
・生命保険
このセグメントの主要会社として、オリックス生命保険が挙げられる。また、次に示すようにオリックス生命の収益は、オリックスの営業収益の大きな割合を占める。
【 2022年 3月期 】
オリックス連結営業収益:2兆5,204億円
オリックス単体売上高:5,883億円
オリックス生保経常収益:5,104億円
銀行・クレジット
・銀行
・無担保ローン
このセグメントの主要会社として、オリックス銀行とオリックス・クレジットが挙げられる。
輸送機器
・航空機のリースと管理
・船舶関連の投融資
このセグメントの主要会社としてオリックスの他、ORIX Aviation System Limited が挙げられる。
ORIX USA
・金融(米州)
・投資(米州)
・アセットマネジメント(米州)
このセグメントの主要会社として、ORIX Corporation USA が挙げられる。
ORIX Europe
ブローバル株式・債権のアセットマネジメント
このセグメントの主要会社として、ORIX Corporation Europe が挙げられる。
アジア・豪州
・金融(アジア・豪州)
・投資(アジア・豪州)
このセグメントの主要会社としてORIX Asia や ORIX Leasing Malaysia、欧力士(中国)投資有限公司などが挙げられる。